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地方から音大へ進学して感じたギャップとは?上京した音大生の実体験

SONATA ACADEMY / 音大受験ガイド

地方から音大へ。入学後のギャップと向き合う。

岩手から上京したピアノ専攻の学生が語る、戸惑いと成長。

地方から音楽大学への進学を考えていると、

「東京の音大生についていけるだろうか」「地方と東京では、音楽に触れてきた環境にどれくらい差があるのか」「周りが自分より上手な人ばかりだったらどうしよう」

と不安になることもあるのではないでしょうか。

今回は、岩手県から上京して東京音楽大学でピアノを学ぶ工藤涼哉先生の実体験をもとに、地方から音大へ進学した際に感じたギャップと、その後どのように向き合ってきたのかを紹介します。

工藤先生は、演奏技術や音楽に触れてきた環境に違いを感じる一方で、音楽への志やモチベーションまで大きく違うわけではなかったと振り返ります。

地方から音大への進学を考えている方に、入学後の生活をイメージするための一つの実例としてお伝えします。

地方から進学した一人の学生の経験を紹介しています。感じるギャップや入学後の経験は、人や大学によって異なります。

地方から音大に進学して最初に感じたギャップ

岩手県から上京して音楽大学へ入学したあと、最初に大きく感じたのは、周囲の学生の演奏レベルと、それまでに触れてきた音楽の量の違いでした。

入学前からSNSなどを通して、レベルの高い学生がいること自体は知っていました。

それでも、実際に同じ大学で学び、目の前で演奏を聴いてみると印象は大きく異なります。

「こんなに上手い人がいるんだ、というのが衝撃的でした。雲の上のような存在に感じる同級生もいました」工藤 涼哉先生

さらに驚いたのは、SNSなどですでに名前を知っていた人だけではありません。

大学に入って初めて知った学生の中にも高い演奏技術を持つ人が数多くおり、それなりに練習して入学したつもりでも、「まだまだ自分の努力は足りなかった」と感じたといいます。

事前にある程度予想していたとしても、実際にその環境へ入ることで初めて実感する差がありました。

「音楽に触れてきた量」にも違いがあった

ギャップを感じたのは、演奏技術だけではありません。

それまでにどれだけ多くの音楽や作品に触れてきたかという点でも違いを感じました。

岩手では、東京と比較するとクラシック音楽のコンサートなどに触れられる機会が限られていたといいます。

大学に入ると、それまで知らなかった作曲家や作品にも数多く出会いました。

一方、東京では日常的にさまざまなコンサートが開催されています。

大学入学後は実際にコンサートへ足を運び、それまで知らなかった作品や演奏に触れる機会を増やしていきました。

地方にいる間に得られなかった経験があったとしても、進学後の環境を積極的に利用することで、少しずつ知識や経験を広げていくことはできます。

周囲との比較にどう向き合ったのか

自分より演奏が上手な同級生に囲まれると、どうしても周囲と自分を比較してしまいます。

実際、同期の演奏を聴いて落ち込むこともあり、入学してすぐに考え方を切り替えられたわけではありませんでした。

そこで徐々に意識するようになったのが、人との比較を目的にしないことです。

「人と比べていたら、もう一生追いつけない。比較して『もっと頑張らなきゃ』となるのはいいと思うんですけど、いつまでも比較していると、自分を悲観的に見ることにもなりかねない」工藤 涼哉先生

周囲との比較によって「もっと頑張ろう」と思えるのであれば、それは一つの原動力になります。

しかし、「あの人より上手くなること」だけが目的になってしまえば、常に他人を基準に自分を見ることになります。

そこで、

「今の自分にできることは何か」「自分の強みは何なのか」

と考える方向へ、少しずつ意識を変えていきました。

周囲にレベルの高い学生がいる環境だからこそ、比較を自分を否定する材料にするのではなく、自分の課題を見つける材料として使うことが大切になります。

地方出身でも変わらなかったもの

一方で、東京へ出てみても、それほど大きな差を感じなかった部分もありました。

それが、音楽に対するモチベーションや取り組む姿勢です。

もちろん大学には、非常に練習熱心な学生が数多くいます。

しかし、「東京で学んできた学生だから、地方で学んできた自分とは根本的に違う」と感じるほどの差ではなかったといいます。

大学には同じように音楽を学ぶ仲間がいます。

苦しいときには助け合ったり、話を聞いてもらったりすることもあります。

「どこで音楽を勉強していても、同じ曲を全国各地でみんなやっています。そこはあまり気にしなくていいと思います」工藤 涼哉先生

幼い頃からどのような環境で音楽に触れてきたかは、あとから変えることができません。

一方で、これからどれだけ練習するか、どのように音楽と向き合うかは自分自身で変えられます。

地方から音大を目指しているからといって、最初から「東京の受験生にはかなわない」と考える必要はありません。

地方から上京した経験そのものが自信になる

地方から音大へ進学すること自体についても、一つの捉え方があります。

遠方から東京へ出て、家族や慣れ親しんだ環境を離れ、新しい場所で生活を始めることには勇気が必要です。

「遠いところから来るのは、やっぱり勇気がいる。そのくらいの志を持って来ているという面では、自信を持っていいと思います」工藤 涼哉先生

演奏技術や、それまでに触れてきた音楽の量では、入学直後に周囲との差を感じることがあるかもしれません。

しかし地方から上京した学生は、その前にすでに、「地元を離れて音楽を学ぶ」という一つの大きな決断をしています。

上京というハードルを一つ越えてきた経験そのものも、その後の大学生活に向き合う自信の一つになり得ます。

入学後にギャップを埋めるためにしたこと

入学後に感じた差に対して、具体的にはどのような行動を取ったのでしょうか。

特に大きかったのが、次の3つです。

1.コンサートへ積極的に足を運ぶ

東京という環境を活かし、さまざまなコンサートへ足を運びました。

実際の演奏を聴くことで、それまで知らなかった作品や演奏に触れ、自分の知識を少しずつ広げていきました。

2.練習方法そのものを見直す

単純に練習時間を増やすだけではなく、

「どうすれば効率よく練習できるのか」「先生の演奏に近づくためには何を変える必要があるのか」

と考えながら、練習方法そのものを試行錯誤するようになりました。

同じ練習を繰り返すだけではなく、自分に足りないものを考えて方法を変えてみることも意識するようになったといいます。

3.大学外の講習会にも参加する

外部の講習会などにも積極的に参加しました。

同じピアノという楽器でも、先生によって演奏に対する考え方や指導方法は異なります。

大学の中だけで完結させず、違う先生から指導を受けることで、新しい視点から自分の演奏を見る機会をつくりました。

入学時点で感じた差を悲観するだけではなく、進学後に使える環境を自分から活用していくことが、ギャップを埋めるための一つの方法になりました。

音大では「自分から動く力」も必要になる

大学生活を送る中でもう一つ感じたのが、自分から行動することの重要性です。

高校卒業時には、地元で友人と一緒にコンサートを開催しました。

実際に自分たちで企画し、お客さんに来てもらった経験が、その後の行動にもつながっています。

大学入学後も、自ら演奏の機会をつくったり、声をかけてもらった場所へ積極的に参加したりするようになりました。

「人と関わっていかないと、音楽はできないと思っています」工藤 涼哉先生

音楽大学へ入学したからといって、大学側がすべての演奏機会を用意してくれるわけではありません。

大学内の演奏会に出演できる人数にも限りがあります。

そのため、大学1年生の頃には、「自分から動かないと、何もしないまま4年間が過ぎてしまう」と考えるようになりました。

そこで大切にしているのが、

「恥ずかしがらずに、まずやってみる」工藤 涼哉先生

という姿勢です。

最初からすべてを一人でやる必要もありません。

友人と一緒に演奏会を企画するなど、小さなところから行動を始めることもできます。

大学の外に目を向けることも大切

音楽大学では、当然ながら専門的な音楽教育が中心になります。

しかし、卒業後も音楽に携わって生活していくことを考えると、演奏技術だけではなく、人とのつながりや、自分の活動を知ってもらう力も必要になります。

大学内では試験や成績によって評価される機会がありますが、大学の外では必ずしも同じ基準だけで評価されるわけではありません。

そのため、

「大学は大学、外は外」工藤 涼哉先生

と分けて考え、大学外の世界にも目を向けるようになったといいます。

  • 演奏会を自分で企画してみる。
  • 大学外の人と関わってみる。
  • 音楽とは異なるアルバイトや活動を経験してみる。

そうした経験によって、音楽を別の角度から捉えられることもあります。

特に音大へ進学する人は、幼い頃から長い時間を音楽に費やしてきたケースも少なくありません。

だからこそ大学生のうちに音楽以外の世界にも触れておくことが、将来の音楽活動を考えるうえで一つの経験になります。

まとめ|地方から音大を目指す人に伝えたいこと

地方から東京の音楽大学へ進学すると、入学後にギャップを感じることはあるかもしれません。

  • 周囲の演奏レベルに驚く。
  • 知らない作品の多さに気づく。
  • それまでに触れてきた音楽環境の違いを実感する。

実際に地方から上京したからこそ感じた差がありました。

しかし、入学時点で存在する差が、その後の4年間を決めるわけではありません。

コンサートへ足を運ぶ、練習方法を見直す、大学外の講習会へ参加する、自分で演奏する機会をつくる。

進学したあとにも、自分の経験や知識を広げる方法はあります。

工藤先生自身は、音楽に対する志やモチベーションまで、地方と東京で大きく違うわけではないと感じたそうです。

地方にいることを理由に、

「東京の人にはかなわない」

と最初から決めつける必要はないでしょう。

  • 今いる環境でできる準備を続けること。
  • そして進学後は、新しく手に入った環境を自分から活用していくこと。

地方から音大を目指すうえでは、その両方が大切です。

執筆協力

工藤 涼哉先生

工藤先生の講師紹介・プロフィールを見る →

岩手県盛岡市出身。岩手県立不来方(現・南昌みらい)高校音楽コースを経て、東京音楽大学でピアノを学ぶ。共演ピアニストとしての演奏活動や、吹奏楽の指導にも取り組んでいる。

プロフィールはソナタアカデミー公式講師紹介に基づきます。本文のエピソードは工藤先生個人の経験です。

取材・参照情報

体験談:添付原稿「202610_1週目_3本目」に収録された工藤先生のエピソード。

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